【アスリート特集】陸上部 : 小池 真郁 (コラム)

 これまで数回にわたり、異国の地アメリカにて奮闘する留学生アスリートを紹介してきたこちらのアスリート特集。今回は、昨秋から今春まで、マーセッド大学の陸上部にて自身の成長に励んだ小池 真郁(コイケ マイク)君を紹介する。小池君は、2017年の9月下旬よりマーセッド大学に身を置き、渡米後すぐに陸上部に入部した。日本では中央大学の陸上部に所属していた小池君は、100m:10.51、200m:21.23という記録を保持しており、将来を有望視される選手の一人であった。そんな彼がなぜ、日本の大学を休学してまでマーセッド大学陸上部への留学を決心したのか。彼の留学を決意した経緯と、現在の活動について迫っていきたい。

マーセッド大学留学までの経緯

 「世界レベルの環境で走ってみたい」この強い決意こそが、彼をアメリカに導いた原動力となった。中学生時代には、『第43回ジュニアオリンピック陸上競技大会』の男子100mにおいて、見事全国の頂点に輝いた実績を持つ小池君(写真中央)は、日本の学生陸上界を牽引してきたランナーといっても過言ではない。高校卒業後は、大学陸上界の先頭を走る中央大学への入学を果たし、陸上部に入部。全国屈指の強豪に囲まれ、恵まれた環境で陸上に励んでいた彼だが、そこでは理想の走りをすることができず、苦悩の日々を送っていた。そんな状況を打開すべく選択した道が、陸上競技の本場であるアメリカへの陸上留学であった。確固たる決意とともに、小池君は、2017年の9月下旬よりマーセッド大学での留学生活をスタートさせた。

 マーセッド大学陸上部を指揮するルイス・フォイコーチは、現役時代に男子100mで全米4位、2000年にはシドニーオリンピック男子100m予選を突破した実績を誇る。彼の指導は、競技成績の向上はもちろん、豊かな人間性を育むことにも重点を置いており、陸上部に所属するどの学生からも絶大なる信頼を寄せられている。そんなルイスコーチの指導を受けられるマーセッド大学の陸上部は、小池君が求める環境そのものであった。

    また、アメリカと日本の陸上競技のシーズンの違いも、小池君にとっては好都合なものとなった。アメリカの陸上競技のシーズンが2月に幕を開ける一方、日本のシーズン開始は4月となる。一般的に陸上競技では、シーズン序盤で自己ベストを更新することは困難とされている。あくまで日本での記録更新に照準を合わせる小池君としては、日本でのシーズ開幕に向けて既にアメリカで身体作りができているため、日本のシーズン序盤に本調子を持ってくることができる。つまり、アメリカ留学を挟むことで、日本で陸上に励む他の学生より高い確率で自己ベストを更新できる可能性が高まるということだ。これこそが、自己ベストを更新するための彼の戦略であり、この時期にアメリカへの陸上留学を決意した理由でもある。

異国の地で挑戦したことで得たもの

 アメリカに留学したことで、小池君は、アスリートとしても、また人間としても、自身の成長を肌で感じることができたという。アスリートとしては、一つ一つの練習により集中して取り組むことができるようになった。日本では、長時間の練習をすることが結果に直結するという「精神論」が未だ推奨されている風潮にあり、それが選手のパフォーマンス低下に繋がっているケースがよく見受けられている。これは日本のスポーツ教育においても問題視されている点だ。しかしアメリカでは、短時間で効率の良いトレーニングを実施する傾向にあり、それが結果に結びつくという考えがされている。決められた時間の中で、短期集中型のトレーニングが良い結果を生むという考えが、アメリカのスポーツ教育における理念である。これが小池君の練習に取り組む姿勢を一変させた。

    また内面の成長としては、自立性を養うことができたという。アメリカでは人生初の一人暮らしにも挑戦した小池君。当初は、慣れない環境での初の一人暮らしということもあり、思い通りに物事が進まないことに歯がゆさを感じたことも多々あったが、その環境にも徐々に適応することができ、今となっては何事にもまずは自分で問題解決に努めるようにもなった。留学当初はままならなかった語学力も、今では、一人で旅行できるほどにまで上達させた。文武両道を重んじるアメリカにて、人間的にも、またアスリートとしても、自身の成長を実感することができた。これが今の彼を支える“自信”にも繋がっている。

今後の夢

  小池君が抱く今後の夢。それは、世界中の文化を理解し、人々の架け橋になることだ。その夢を叶えるためにも、多民族国家であるアメリカにて様々な文化に触れ、多人種を学ぶことは、今の彼に適していた。また彼の場合、留学前から勉学に励み、留学生活を有意義に過ごすための準備に徹してきたこともあり、中期留学でも成果を感じることができたといえる。これは、今後留学を控える方にも手本にしていただきたい姿である。人生で数少ない留学という機会を、その期間を楽しむだけのものにしてしまうのではなく、将来の自分を助けるためのもの、つまり「夢を実現させるためのもの」にできた小池君は、留学生の鏡ともいえる。

これからの留学生アスリートへのアドバイス

 「マーセッドの方は親切な方が多く、語学力が低い学生に対しても、理解をもって接してくれます。英語に自信がないからと最初から留学を諦めてしまうのでなく、そこに夢や目標があり、それに対する揺るがない決意を持っている限り、とにかく行動に移すべきだと思います。何事にも誠心誠意をもって打ち込むことができれば、必ず道は開けます。私は今回の留学を通して、失敗を恐れず目標に向かって一心不乱に突き進むことの重要性を学びました。」

 小池君が選んだアメリカへの陸上留学という道は、彼のように熱い志を持つ学生に新たな道を示した。彼の成功体験が、今後の留学生の希望となり、また彼らの背中を押すものになっていることを願っている。