精密農業による農業革命

 

 「精密農業」という言葉をご存じだろうか。アメリカで急速な成長を遂げているこの精密農業(Precision Farming)が、今のアメリカの農業スタイルを大きく変えつつある。

 

 1990年代に起きたGPS機能の技術発展とGPS情報の精密化により、精密農業という分野は実践的かつ現実的な戦略として立ち現れた。現在は更なる技術発展に伴い、大規模農業を中心に多くの農家が精密農業を導入し始めている。

 

 Hexa Reportsの調査によると、精密農業は2025年までに434億ドル以上の国際市場へと発展していくことが予想されている。もちろん、発展するのは市場だけではない。精密農業による農業技術の発展は、人類にとって、持続可能な資源の管理と食料生産力の強化にも繋がるのだ。



拡大し続ける精密農業の市場規模

   更に、農業投資プラットフォームのAgFunderによると、農業関連企業への投資が減少傾向にあるアメリカ農業の中で、Ag Tech(農業テクノロジー)に関わる投資は急速に増加しており、2014年から2015年のヴェンチャー企業への投資額は約二倍となり、2016年には投資額は減少したものの32億ドルもの投資を得ている。  また、精密農業のマーケットで競い合っている大手企業は比較的若い企業が多く、2000年代に創立された企業がほとんどである。新しい市場では今までとは大きく違い、経験と知識が生産性を左右していた旧式農業から、現代のデータ化された情報と技術で生産性を上げていく新たな農業スタイルが生まれた。現代における新たなニーズに合わせた農業製品が求められていく中で、どのようにその需要に合わせていくかが、今後の農業関連企業の課題となっている。


 

日本のスマート農業

 

 日本ではスマート農業という言葉で精密農業が社会に浸透しつつあり、注目を集めている。農林水産省が推奨するスマート農業は、農業従事者の減少や高齢化の打開策として精密農業を取り入れ、日本の第一産業の短所を長所に変えていく事を可能にする技術革新となってゆく事が期待されている。日本企業も数多くの農業モニタリングツールや情報分析ソフト制作・研究を進めており、今後他国を追い越す日本の技術力を発揮出来るかどうかが今後の課題となっている。また、大企業が勢いを増している中で、いかに中小企業が自社の技術力で戦っていくのかが今後の世界情勢を握る鍵となっていくだろう。

 

 「農業」と聞くと、どうしても従来のアナログ式農業のイメージが強くなってしまうが、現代のデジタル農業はそれを覆し、まったく新しい形の「農業」という職業を作り出している。現代の精密農業には驚くほど多くの先端技術が取り入れられており、具体例としては、ドローン技術を活用した農薬散布、人工授精、そして特に注目を集めているのがAI(Agri-Informatics)農業という技術が存在している。精密農業とAIは従来の農業者たちの知識を細かにデータ化し、それらを解析していくことで農業の新参者にも優しい農業を作り上げているのだ。

 

 更には、GPSのガイド機能を活用した無人トラクター、GPSによる土壌試験、コンピュータを用いた農耕計画とバーチャル農薬散布試験等、最新鋭の技術が現代農業に活用されている。

 

 生産効率をより100%に近づけていくためには、詳細なデータ収集とビッグデータの分析・活用、そして細心の生産環境管理が欠かせない。精密農業は膨張していく世界人口と食料需要に対応するための食糧生産に大きく寄与するカギとなる事は間違いないだろう。

 


 

精密農業の法整備を進める米国

 

 こうした農業における技術革新の中で、アメリカでは既に精密農業を適切に管理する為の法整備を進めている。

 農業IT団体や企業らが適切なサービスを農業関係者へ提供するための認定を付与するThe Ag Data Transparency EvaluatorというNPOも設立され、今後起こりうる企業と農家間のトラブルを未然に防ぐ為に、企業向けの審査が設けられている。無事認定されると、企業は認定証を利用し、顧客に自社の安全性と安心のサービスを売り込むことが出来る。

 


 企業が農地データの収集・分析、そして情報提供を行うということは、農家が個人情報を企業に渡すことにも繋がる。すなわち、情報漏洩を防ぐためにも信用性が重要な鍵となる。今後はこの認定証が、顧客である農家が信頼できるパートナー選びの為の、一つの規格となるだろう。新しいビジネス分野であるが故に、未だ農家たちは十分に法律で守られていない。The Ag Data Transparency Evaluatorは、企業がプライバシーポリシーに乗っ取っていることを証明する第三者による審査であり、企業の透明性を保証する役割を担っているのだ。

 

 法律的な面でも、農家と企業のビジネスが円滑に進むよう、農業IT企業や農業関連団体のデータ管理から人々の権利を守る為の活動が、技術の進歩の裏で行われているのである。

 

 今後、ますます勢いを増してゆく精密農業による国際的農業革命は、止まることなく精密農業の市場を拡大させてゆくだろう。しかしながら、各国・各企業ではどのような製品への需要が高いのか、技術製品の生産性等を踏まえてもまだ、市場分析は困難だ。今後の国際農業革命の動向がどのようになっていくのか、各国の技術力と適応性、そしてデータ分析力と管理力などが、他社との差をつけるポイントとなるだろう。

 

 この精密農業分野の最大手企業となるのはどこの国のどの企業だろうか。先にも述べた通り、精密農業の技術革新は、市場だけではなく、人類の未来にも影響を与える。今後の精密農業の動向に注目しよう。