名前:江藤光輝(エトウミツキ)
経歴:
2019年 Merced College入学
2022年 University of Evansville入学(大学院)
2024年 大学院卒業、 University of Floridaでインターン
2025年~ University of Virginiaでアスレティックトレーナーとして勤務
2019年、日本の大学を卒業後にマーセッドカレッジへ留学した江藤光輝さん。当時の江藤さんは、創価大学で陸上競技に打ち込んだ経験と、怪我に苦しんだ自身の経験をもとに、アメリカでアスレティックトレーナー(スポーツ現場で選手の怪我の予防、応急処置、リハビリなどを担当する専門職)を目指していました。
マーセッドカレッジで英語とアスレティックトレーニングの基礎を学び、その後University of Evansvilleの大学院へ進学。大学院修了後はUniversity of Floridaでのインターンを経て、現在はUniversity of Virginiaでアスレティックトレーナーとして働いています。
渡米から約7年。学生としてアメリカに渡った江藤さんは、現在、NCAA Division 1(全米大学体育協会における大学スポーツの最上位レベル)の現場で、選手を支える立場になりました。
University of Virginiaで陸上とクロスカントリーを担当
江藤さんは現在、University of Virginiaで、トラック&フィールド(陸上競技)とクロスカントリー(長距離走を中心とした陸上競技種目)のチームを担当しています。肩書きはAssistant Athletic Trainer(アシスタント・アスレティックトレーナー)ですが、実際には陸上競技部門のLead Athletic Trainer(リード・アスレティックトレーナー/担当部門を中心となって見る立場)として、チーム全体を見ています。
「自分ではまだ“ヘッド”と呼ぶのに違和感がありますが、僕の下で働いてくれているインターンが2人います。」
担当する選手は約95人。コーチは10人ほど。そこにチームドクターや他の医療スタッフも関わります。江藤さんの仕事は、単に練習中の怪我に対応することだけではありません。
朝は選手のトリートメント(治療・ケア)やリハビリ(競技復帰に向けた回復プログラム)から始まります。練習前にはウォーミングアップ前のケアを行い、午後の練習中はトラックで選手たちを見守ります。練習後はリカバリー(疲労回復のためのケア)や、ウェイトトレーニング後のケアにも対応します。
「陸上のシーズン中は、朝からトリートメントやリハビリを見て、午後の練習に備えます。練習中は何かあった時にすぐ応急処置ができるようにして、練習後はリカバリーを見ます。」
D1(NCAA Division 1)の現場では、求められる準備の量も、関わる人数も多くなります。特に陸上競技は種目が多く、選手の身体の状態もそれぞれ異なります。その中で、日々の小さな変化を見逃さないことが重要になります。
大学院、フロリダ、そしてUVAへ
江藤さんが大学院として選んだUniversity of Evansvilleは、少人数のプログラムで教授との距離が近いことが特徴でした。マーセッドカレッジ時代にも、英語面や学業面で不安を抱えていた江藤さんにとって、質問しやすく、サポートを受けやすい環境は大きかったといいます。
「クラスメイトが5、6人くらいで、教授との距離も近かったです。僕は英語の面でも勉強の面でも他の学生より遅れていたので、いつでもオフィスに行って助けてもらえる環境は本当に良かったです」
大学院修了後、OPT(Optional Practical Training/アメリカの大学・大学院を卒業した留学生が、専攻分野に関連した仕事で一定期間働くことができる制度)を使って次のステップへ進む必要がありました。しかし、インターン先の決定は順調ではありませんでした。
江藤さんは大学院時代、実習で野球部に関わった経験から、当初は野球を担当するアスレティックトレーナーにも興味を持っていました。一方で、自身が陸上競技で怪我を経験してきたこともあり、怪我を抱える陸上選手を見ることに複雑な思いもあったといいます。
それでも、卒業前に仕事を探す中で、自分に合うポジションはなかなか見つかりませんでした。さらに、アスレティックトレーナーとして働くために必要な認定試験にも2度不合格となりました。
「みんな1回目、2回目で受かっていく中で、自分は2回落ちました。OPTも始まるし、行くところもないし、どうしようという状況でした。」
その時に見つけたのが、University of Floridaの陸上部インターンのポジションでした。フロリダ大学は陸上競技の強豪校であり、全米トップレベルの環境を持つ大学です。大学院時代の教授がフロリダ大学で働いていた縁もあり、江藤さんはそのポジションに採用されました。
「フロリダでの1年間は本当に学びが多かったです。陸上部だけでアスレティックトレーナーが3人いて、やらなければいけないことも多く、一気にレベルが上がりました」
その後、江藤さんは再び就職活動を行います。今度はH-1Bビザ(アメリカで専門職として働くための就労ビザ)のスポンサーが必要でした。D1の大学を中心に、50校から70校ほどに応募したといいます。
返信は少なくありませんでした。しかし、多くの大学から返ってきた答えは「ビザのスポンサーはできない」というものでした。
「レジュメとカバーレターを送り続けました。返信は結構ありましたが、ビザのスポンサーができないと言われることがほとんどでした。」
アメリカの大学がビザのスポンサーとなる場合、スポンサーはビザ申請の費用を支払い、複雑な手続きを行う必要があります。同じ実力であれば、ビザを必要としない現地の学生を雇用するのが自然な流れです。
その中で、UVA(University of Virginia)がスポンサーをしてくれることになりました。競技はまた陸上でした。
「陸上には縁があるのかなと思いました」
厳しい環境の中で働く
そして、UVAで働くことになりましたがここでの仕事も、決して簡単ではありません。江藤さんは、現在のヘッドコーチとの関係についても率直に話してくれました。
「来る前の面接で、コーチ(監督)から『俺はフレキシブルじゃない(融通が利かない)けど、それでもやれるか』と聞かれました。そこで『やれます』と言って来たので、今はどうやってコーチ(監督)と働くかを毎日考えています。」
厳しい言葉を受けることもあるといいます。それでも、江藤さんはこの環境を前向きに受け止めています。
「1年経ちましたけど、本当に学びが多いです。大変なことも多いですが、成長できる場所に来られたと思っています。」
マーセッドカレッジ、大学院、フロリダ大学、そしてUniversity of Virginia。江藤さんは、英語、資格試験、就職活動、ビザの壁に向き合いながら、一つずつ次のステップへ進んできました。
後編では、UVAの現場で大切にしているコミュニケーション、今後の目標、そしてこれからアメリカでアスレティックトレーナーを目指す人へのメッセージを紹介します。
